雲の上の茶畑

雲の上の茶畑

標高500メートルの高地で、復活させた茶の有機栽培に取り組む
平野茶農業協同組合と丸福製茶さん 生産者:平野茶農業協同組合と丸福製茶さん
場所:静岡県静岡市葵区平野宮郷 
←平均年齢60歳ですが、みなさん元気!

「夏も近づく八十八夜〜」。茶摘みと聞くと自然に口をついて出てくるこの歌。「八十八夜」とは立春から数えて八十八日目のことで、5月2日ごろを指す。春から夏の訪れを伝えるこの美しい日に摘まれたお茶は縁起がよく、昔から無病息災になると言われてきた。実際には産地の気候によって茶摘の時期は若干異なるが、この頃に収穫された新芽には冬の間から蓄えられたエネルギーが満ち、その若々しい芳香とともに極上とされているそう。今回は梅雨入り前の5月、この新茶摘みの真っ最中に静岡の茶畑を訪れた。

ナチュラルハウスの定番商品として愛され続けている「有機煎茶」。この原料となる茶畑は、お茶処静岡の葵区、平野宮郷にある。標高500メートルの山合いに位置するこの茶畑はまさに「雲の上の茶畑」というにふさわしい趣。たどりつくまでには最寄駅から車で約一時間、乗用車一台がやっと通れるほどの山道を延々と登らなければならない。ずいぶん山奥でさぞかし不便だろうといぶかっていると、この人里離れた不便な立地こそが、有機栽培でおいしいお茶を作る秘密だと生産者の大村節夫さんが教えてくれた。

雲の上の茶畑
雲の上の茶畑
↑お話を伺った大村節夫さん。昔ながらの背負い籠。

「お茶は洗わないで加工し、口に入るものでしょう。だから有機栽培にこだわってやっているんだけれどね、ここなら高地だから虫もつきにくいし、車も通らないから排気ガスがかかる心配もない。人にとっての便利さが、農業においては必ずしも最良の方法であるとは限らないからね。」

わたしたちの暮らしに古くから親しまれ、欠かせない日本茶。しかしそのお茶市場の中で有機栽培のものが占める割合はわずか数パーセントと言われている。効率や価格を追求する波は、日本人の心であるお茶の世界にまで及んでいる。有機栽培はやっぱり手間がかかるし、収穫が不安定で割に合わないと辞める農家が多いからだ。

「この茶畑もね、今から約20年くらい前かな、廃園になるところだったの。不便な場所だしね。でもせっかく有機のいいお茶ができる場所なのにそれはもったいないと。だから仲間に声をかけてみんなで復活させようと決めたんです。」

不便さを差し引いても余りあるほどの魅力ある土地。農家の人にとってはまず土地が持つポテンシャルが第一条件だ。それからそれを活かす方法を見極める農家の技術、その年の天候が影響を与える。しかし農薬や化学肥料を使えばそれらの条件を最低限に抑え、比較的手軽に安定した収穫を得ることができる。「百姓はいいものをつくるのが当たり前」。そう大村さんはさらりと言うが、その「いいもの」とは人にとって都合がよい、という意味だけではなく、自然の摂理に従って正直にものづくりに取り組む姿勢も含まれている。

雲の上の茶畑
雲の上の茶畑

こちらのお茶を頂いた。
派手さこそないものの、口に含むと苦味と旨みの調和がよく、やわらかな甘みが余韻として舌に残る。これが「いいもの」の味か。当たり前のように身近にあるものこそ、本物の味を守り伝えたい。農家さんの想いにふれてから、一杯のお茶に対する見方が変化したように思う。


お茶を摘む方法は3パターン

ここでは天候や人手に合わせてこの3つを取り混ぜて収穫している

手摘み
(1)昔ながらの手摘み。繊細な選別ができる。
専用ばさみ
(2)専用ばさみ。かごが一体化していて収穫した葉がそのまま収納できる優れもの。
機械摘み
(3)機械摘み。カーブに沿って3人一組で作業する。

有機栽培は一朝一夕にあらず

雲の上の茶畑

葉が退色しているのは害虫(ダニ)のしわざ。養分を吸ってしまうためだ。そのダニを食べてくれるがクモやテントウ虫といった益虫たち。当初は畑に天敵がいなかったため被害が出て大変だったが、有機栽培を続けていくうちに天敵も住まうようになり自然のバランスがとれた畑に戻っていった。現在は一番茶、二番茶まで安定。慣行のお茶は4番茶くらいまでとるが、ここではそこまで取りつくさず、3番茶程度に留め品質を守っている。

取材:2007年5月19日
有機煎茶【有機JAS認定】

有機煎茶【有機JAS認定】

こちらでご紹介した平野茶農業協同組合の有機栽培茶です。
丹精こめて育てられた茶葉のふくよかな味わいに、「水色」(すいしょく)と呼ばれるやや黄味がかった昔ながらのお茶の色が特徴です。
65g 945円

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