内藤農園 有機JASを超える農作物を目指して

内藤農園 有機JASを超える農作物を目指して 〜ホールトレード(1)〜

独自に見出した方法論で、新しいかたちの有機栽培に挑戦する
内藤一仁さん(内藤農園)
↑農業に携って35年の内藤さん。
「それでもまだまだわからないことばかりです。」
生産者:内藤一仁さん(内藤農園)
場所:山梨県甲府市

プロフィール:篤農家として知られた父親の後を継ぎ、35年前より農業の道へ。有機農業歴29年。全ての生き物を「陰」と「陽」のバランスでとらえる独自の有機農法「陰陽農法」の提唱者。日本初の第三者によるオーガニック認証機関JONA(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)の元理事。

ナチュラルハウスがこの夏より始める新しい試み、「WHOLE TRADE」。それはオーガニックに真剣に取り組む小規模の農家を支援するため、A級品から通常は店頭に並ばないC級品まで作物の買い取りを約束し、中間業者を介さずに直接農家と取引する新しいパートナーシップのかたちだ。消費者にとっては、確実に作り手の顔の見える、安心で高品質の商品を手に入れることができるという利点があり、栽培者側としては、業者を通さない分相場に変動され買い叩かれる心配がなく、適切な価格で買い取りしてもらえるという利点がある。今回はその消費者と生産者を結ぶ新しいwin winの仕組み、「国内フェアトレード」とも呼べるホールトレードの最初のパートナーとなる内藤農園を訪ねた。

甲府市外の住宅地の一角にある農園は、規模は1.8ヘクタールとさほど大きくはないものの、そこで栽培される多種多様な農産物には目を見張るものがある。トマト、ナス、キュウリと言った夏野菜をはじめ、小麦に稲、ブトウ等々。いちごやハスも毎年収穫している。敷地内には自家採種用に花を咲かせた人参や春菊、にんにくが目を楽しませてくれ、蝶がその中をひらひらと舞っている。この農園で育てられるこれら全ての作物が、有機JAS法で認められている最低限の農薬すら使用せず栽培されているというから驚きだ。それは、マクロビオティックの考え方を取り入れ、試行錯誤の末たどりついた独自の「陰陽農法」というやり方だ。

「これ、食べてみて」
そう言ってその場で無造作にもぎとったきゅうりを差し出されて、まるかぶりする。みずみずしい、というより密度が濃いと言ったほうがふさわしい味が口いっぱいに広がった。「味があるでしょう。人も野菜も、いいものには味がある。『食薬』という言葉があるけれど、本来いい食べ物は薬になる。だから強い野菜を食べて、初めて健康になれるんです。」

食とは、その野菜が持つパワーを頂くこと

甲府に農家の息子として生まれたが、嫌々家業を継いだ。若い頃は違うことがしたくて脱走ばかりしていたという。そんな内藤さんが有機栽培に目覚めたのは農業を始めて6年目、愛娘が一歳半の時にアトピーを発症したのがきっかけだった。卵、パン、牛乳、すべてがダメと言われ山梨県中の皮膚科を渡り歩いた。そんな中、農業という人の命の源である「食」を生み出す仕事に自覚を持ち始める。

「からだを作るのは食べ物でしょう。でも農薬を使わなきゃ虫がつくような、弱い植物を人間が食べて果たして健康になれるのか、と。そう考えるとやっぱり有機栽培にたどり着くんです。薬や化成肥料、そんなものに頼らなくても育つ強い作物を作り、それを食べることでそのパワーをもらう。それが本来の食のあり方だと思うんだよね。」

謙虚に自然をみなきゃ、いつまでも堂々巡りだよ

有機栽培に転向することを決意したものの、最初はノウハウがわからず失敗ばかりが続いた。化学合成農薬をやめたとたんアブラムシが大量発生する。畑の作物の中に入って悩み、そのまま夜が明けたこともあった。そんな時、桜澤如一氏の著書『マクロビオティック』に出会い、あ、これなんだ、と直観したという。それはすべての食物には『陰』と『陽』があり、食を通じてそのバランスをうまく保つことによって、人は健康になれるという考え方。マクロビオティックによると人の体は本来陽性で、それが陰性に傾いた時に病気になる。人間にとっても野菜にとっても一番悪いのは冷えだから、病気になったら体を温める。その考え方を食物を栽培する段階から取り入れてみよう、と内藤さんは考えた。陰性の野菜には陽性の動物性肥料を与える。陽性の虫がつくのは、その野菜が陰性に傾きすぎているからだ、という風に。注意深く作物や土の状態に目を配り、その考えを実践していくと畑は少しづつバランスを取り戻し、収穫量も上がっていった。

「でもね、頭でわかるだけじゃだめ。それを自分で実行して、失敗しながら体得していかないと。ものごとすべてには理由がある。虫が付く、病気になる、うまくいかなかったら、その理由を考える。自分で納得して初めて前に進むことができるっていう性格だから、ここまで辿り着くのにすごく時間がかかっちゃった。我ながら大バカモノだって思うよ。」そんな体当たりの試行錯誤の末、やっとたどり着いた独自の『陰陽農法』。内藤さんはこれを日本中に広めたいと考えている。

「謙虚に自然を見つめ、その土地のオーラを感じること。そんな基本的なことから伝えていきたいね。本質を見極めないと、情報ばかりに振り回されて堂々巡りになってしまう。母なる大地から百のものを産むのが『百姓』でしょう。これは作れるけれどあれは作れない、そんな仕事だと『半姓』になっちゃうからね(笑)。陰陽農法を応用すれば、どの土地でも、どんな作物も有機栽培で作れるはず。僕は百姓として、それを証明していきたいと思っています。」陽に焼けた内藤さんの笑顔は豪快だ。そこには実際に手を動かして体得した経験からくる自信がみなぎっている。

力強い生命力にあふれる内藤さんの野菜たち。自家採種も重要なテーマ

きゅうりの受粉
きゅうりの受粉。早朝、おしべが咲いている時をねらって手作業でめしべに付ける。通常のきゅうりからは種はとれないため。
可憐なにんじんの花
可憐なにんじんの花。他にもきゅうり、ほうれん草、にんにく、レタスなど自家採種している。
ぶどうの有機栽培
不可能と言われたぶどうの有機栽培も行っている。益虫のクモが働き、生態系のバランスが保たれている。
取材:2007年6月13日
ホールトレード第一弾!内藤さんのきゅうりとナス、トマトはナチュラルハウス関東地方各店にて6月末より出荷予定です。独自の「陰陽農法」で育てられた力強い味わいの野菜たちをどうぞお試しください!

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