働く土、癒しの畑

働く土、癒しの畑

いい畑は、その土の上に立っているだけで安心できる
斉藤完一さん(生産者連合 デコポン) 生産者 : 斉藤完一さん(生産者連合 デコポン)
場所 : 千葉県山武市
←2007年夏のギフトカタログの表紙にもなった斉藤さん

千葉県山武市で、20年間以上化学合成農薬や化学肥料を使わない有機栽培による野菜づくりを行っている斉藤さんは、ナチュラルハウスで最もつきあいの深い生産者のひとりだ。100人を超える生産者連合「デコポン」の取締役も務め、研修生の受け入れや若い後継者の育成など、日々精力的に活動している。そんな斉藤さんに土への想いと、日々感じていることを伺った。

生み出し、引き継いでいく土づくり

5万平米の畑と6反の田んぼを、夫婦2人と研修生3〜4人でやっている。
化学肥料に一切頼らない土づくりをしている斉藤さんにとって、こだわりは何と言っても自家製堆肥。すべての畑をこの自家製堆肥だけでまかなっているという。鶏糞や油粕、そしてそばの実やとうもろこしの実、大豆もたっぷりと加えたオリジナルの配合は、試行錯誤の末に行き着いた斉藤さんの秘伝レシピ。面白いのは最後にモンゴル岩塩を混ぜこむこと。「ミネラルを今、いちばん大切にしているからね」。

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↑最初は白い大豆も発酵が進むにつれてこのように真っ黒に
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これらを混ぜた堆肥を時々切り返しながら1年程度寝かせ、十分発酵させてから畑にすきこむ。その際、堆肥の種菌を半分残しておき、次の堆肥づくりに足して使うのがポイントだそう。いい微生物が住み着いた堆肥をぬか床のように引き継ぐことで、畑の土が充実し、農家の財産となっていく。

←見事な団粒構造を形成した斉藤さんの土は、ふかふかと柔らかくて水はけも良い。試しに棒を差し込むとスーッと入る

微生物も菌も、同じ循環の輪に生きる仲間

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発酵中の堆肥を切り返すと、もくもくと白い湯気が立った。微生物がうまく働き、分解が進んでいる証拠だ。「堆肥の中に白く見えるのが放線菌。あとは糸状菌や乳酸菌も働いているね。上手に発酵すれば内部は70度くらいまで上がるんだよ。香りもいいでしょ。好気性の菌がうまく働いている証拠です。」
たしかに堆肥の表面をさわるとポカポカと温かい。
普段は感じることができない微生物の世界。しかしここでは確かにその存在を肌で感じることができる。菌を愛する斉藤さんは、最近の除菌流行りも懸念している。自然界にはもともと無数の菌が存在している。悪い菌(人間にとっての話だが)もいればいい菌もいる。それをすべていっしょくたにし、「除菌=清潔、安心」という図式をインプットするのは、人間の体に備わった抵抗力を下げることにつながるからだ。「うちではちょっとくらい泥つきでも食べちゃうよ。本当に健康な土だったら大丈夫。」

自ら働く土

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農業をする上で畑には必須と考えられているチッ素だが、斉藤さんの畑ではさほど重要視していないという。「日本の畑のほとんどがチッ素肥料を入れている。そうしないと野菜が育たないと思い込んでいるからね。でも植物には本来空気中のチッ素を固定する働きがあるし、微生物の死骸もチッ素になるんです。人が手を加えなくても本来自然界のバランスはとれている。それをうまく活かしてあげるのがわたしらの仕事なんだよね。」
あわてず、自然のリズムにまかせて。化学肥料を与えればあっという間に大きくなり、葉っぱは真っ青に育つ。しかし肥料ぶくれした野菜は水っぽく、肥料分が固まっているとそこに根が集中してしまうと言う。
「うち(有機栽培)のはね、根がチッ素を自分で探しながらはっていくんです。だからじっくりと育つ。生命力が違うんだよね。人間だって同じでしょ、与えられてばかりの人間と自分で獲得してきた人間じゃ生きていく力が違う。」いい土は根を育て、肥料に頼らず自ら働く。斉藤さんの野菜がおいしい秘密は、どうやらその辺りにあるようだ。

癒しとしての畑

「いい畑は、その土の上に立っているだけで安心できる。野菜の生産の場としてだけでなく、畑は人を癒す場なんです。」
斉藤さんは野菜に声をかけるのを大切にしているという。そんなこころが通う畑と、殺虫剤を散布し、大型機械で工業的に栽培される畑との間には、まごうことなき違いがある。何より畑に流れる空気からして違っている。
「子どもの食育とか最近騒がれているけれど、こういう場所に来たらいいんです。そしたら体でわかる。土と水さえあれば、子どもは本能で遊ぶからね。大人も一緒。会社で営業会議ばっかりじゃ嫌になっちゃうでしょう(笑)。そんな時は、畑に来て欲しい。土と水があれば人は生きてゆけるから。」

わたしたちの暮らしが農と切り離され、食べ物を『つくる側』と『買う側』に引き裂かれたのは、人類の長い歴史からみたらごく最近のことにすぎない。わたしたちが畑に来て、土をさわっていると癒されると感じるのは、そんな人としての本能が呼び覚まされるからだろうか。

目に見えない無数の生物が息づく健全な大地。その土の上でわたしたちは生かされている。

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微生物の働くふかふかの土が素足にきもちいい!
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斉藤さんのもとで研修を受けた新規参農の「三つ豆」さん。斉藤さんの想いは若い人にも引き継がれている
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澄んだきれいな味の野菜たちは、ゆでると甘さが一層際立つ。「10年後にも残る味」と斉藤さん
日時 : 2007年 春
斉藤完一さんの野菜は、ナチュラルハウス全店で取り扱っています。
この夏のオススメは何と言っても空芯菜!店頭で見かけたらぜひ手にとってお確かめを!

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写真協力:園田昭彦
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