転地養蜂のはちみつ物語

花を追いかけ蜂と旅する、転地養蜂のはちみつ物語

日本の伝統、転地養蜂を後世に伝えたい
転地養蜂のはちみつ物語 生産者:近藤 成明さん
場所:島根県益田市匹見町

近藤さんは大分県に拠点を持つ専業養蜂家の4代目。日本では数が少なくなった『転地養蜂』の継承者だ。『転地養蜂』とは、自らが育てた蜂と一緒に蜜源の開花時期に合わせて日本列島を南から北へと縦断しながら採蜜する方法のこと。南北に長く、四季が豊かな日本ならではの養蜂文化だ。近藤さんは1年の半分以上を移動先での採蜜に費やす、まさに旅する養蜂家である。

南から北へ、はちみつを求めて

「冬は花もないし蜂も働かないから大分にいますが、それ以外の季節はほとんど蜜を採るために移動していますね。みかんの花の咲く4月から湯布院で『みかん蜜』の採蜜がスタートし、6月くらいまではそこに巣箱を設置して行ったり来たりします。養蜂と言えば巣箱を置くだけと思う人もいるけれど、毎日様子を見に行ったり女王蜂を分家させたりと結構世話があるんですよ。一週間ほど現地に滞在し、蜜が集まったら大分まで運んで、2〜3日休んだらまたすぐ戻ります。蜂に何かあったら困るし、こまめに集めておかないとチャンスロスになってしまうので、ゆっくりしてられないですね。そのうち5月になって島根でも『百花蜜』の蜜源になるリョウブやヤマザンショウの花が咲き始めると、そっちも行かなくてはならないから忙しい。春から夏にかけてはいくつもの現場をかけもちします。自然は人の都合で待ってくれないから、タイミングが大切。旬の花を追いかける転地養蜂は、まさに移動との勝負です。」

転地養蜂のはちみつ物語

↑500箱の巣箱を積んで移動する。

転地養蜂のはちみつ物語

↑リョウブの花がちょうど咲き始めていた。夏の百花蜜の蜜源。

時間を有効活用するため、長距離の時は夜通し車を走らせることも多いという近藤さん。交代で運転するとは言え、体力的にはかなりハードだ。地元大分と鹿児島、島根を拠点に、秋田や青森、年によっては北海道まで足を運ぶこともある。

「移動は全部車です。蜂と一緒だから飛行機にも乗れないし(笑)。転地養蜂は自然との共存。遠くまで足を運んでもいい花に出会えるとも限らないのが難しいところ。最近は気候がおかしくて自然の調子も狂っているでしょう。養蜂は花次第だから、そういった影響を直に受けるんです。」

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↑伺った採蜜場所は中国山地のど真ん中。熊に襲われないよう巣箱の回りを電柵で。

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↑ひとつひとつ巣箱を確認。
防除服は風を通さないから、夏は汗びっしょり!

養蜂をめぐる現状

日本での一人当たりのはちみつ消費量は年々増えているが、その90%以上は海外からの輸入品。国産はちみつの占める割合は5%とも言われ、伝統的な転地養蜂のものとなればさらに希少品だ。また、昨今の自然環境の変化も、養蜂に直結した問題になっている。

転地養蜂のはちみつ物語

↑蜜蜂が一生かかって作るはちみつは、小さじ一杯にも満たない。

「日本のはちみつと言えば『れんげ』だったけれど、今は自生のものはほとんどなくなってしまいました。うちでは九州で米の栽培用に育てたれんげを蜜源として利用させてもらっています。れんげは米づくりの際に緑肥として鋤きこむと美味しい米ができ、肥料も少なくてすむため環境にもやさしい。しかもはちみつも採れるので一石二鳥です。田んぼの近くに巣箱を置いて、週一回のペースで4〜5kg程度採蜜します。養蜂も山に行って蜂を離せばいいというものではなく、時代に合わせて昔とは違った工夫が求められてきました。しかしやっぱり基本は山や花といった自然だし、蜜の収穫量も蜂の働き次第で決まる。養蜂をやっていると、自然に生かされている、って実感しますよ。」

懐かしいけど、新しい。そんなものを作りたい。

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↑採蜜部隊のみなさん。一番左が3代目の近藤さんのお父様。

花の咲き具合や場所によって毎回微妙に味が変わるはちみつ。工場で作られる均質化した甘味に慣れてしまったわたしたちにとって、そんなところもはちみつの魅力だ。近藤さんも、そんな自然の産物であるはちみつに魅せられたひとり。5年ほど会社勤めをした後、やはり子どもの時から慣れ親しんできた養蜂の世界に戻り、4代目となった。平均年齢70歳と言われ後継者不足に悩む養蜂の世界で、30代の近藤さんは頼もしい存在。時代にあった新しい商品開発にも力を入れている。

転地養蜂のはちみつ物語

↑せっかくだからと、巣箱の蜜をペロリ。美味しさに感激していたら、油断したところを刺されました。自然は甘くない・・・(涙)。

「最近の大ヒットは『生姜のはちみつ漬け』。昔ながらのおばあちゃんの味が逆に新鮮に映るみたいで、時代が求めているのを感じます。『かりんのはちみつ漬け』や、『ゆず茶』も人気。次はどんな商品がくるのか考えるのが楽しい。次の目標は、地元の人に愛されるはちみつを使ったお菓子屋さんをやること。規模は大きくなくていいんです。自分のペースでやっていきたいから。」

日本の文化、転地養蜂を守りたいという気概を持ちつつも、あくまで自然体ではちみつの世界を楽しんでいる近藤さん。伝統と現代の間を軽やかに行き交う感性で、未来を見つめながら今日も蜂と一緒に旅をしている。

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↑蜂の動きを鈍らせるための燻煙器。これでシュシュっとやってから巣箱を触る。

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↑ハケで蜂をふるい落としてから、蜜を確認。
「一昨日まで雨だったから、ちょっと集まりが悪いかな〜」

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↑巣箱は大工さんに特注。これなら蜂も居心地が良い?

日時:2007年7月25日
転地養蜂のはちみつ物語

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