「創業の精神」~青山店から43年間の感謝をこめて~
代表取締役 白川洋平
「創業の精神」
冬の寒い店頭で大根をもって「無農薬です。いかがですか」とお客様に一生懸命すすめている社員のあの姿。玄米弁当を差し出す使命感に燃えた後ろ姿。お客様を啓蒙しようとするやる気のある社員たち。白川筧は大赤字の部門であるナチュラルハウスの創業を決意した。
コトブキ創業者である、祖父の細谷清は1945年台湾から帰国する時、全財産をはたいて純白の砂糖を日本に持ち帰った。それを元手に神戸三宮の闇市でぜんざい屋「寿本舗」を起業。人工甘味料サッカリンではない本物の砂糖は戦後の人々の心を寿ぎ、お菓子の町神戸で、「本物の信頼」という暖簾を生んだ。これがナチュラルハウスのルーツである。
清の娘婿白川筧は菓子事業を見事に成功させた。しかし一方で当時は高度成長期の真っただ中。食品では農薬は使い放題、薬害問題が頻発している時期であり、リンゴやミカンは洗剤で洗わなければならないほどの農薬が使われていた。1978年、「菓子事業が元気なうちに第二の事業の柱を立ち上げなければ···」との危機感にかられていた筧は、ニューヨーク“BIG APPLE”の地で、「オーガニック」と運命的に出会う。
帰国後、新規事業としてオーガニック専門店6店舗を立ち上げた。しかし早すぎたオーガニック事業は大赤字となり、1982年コトブキの取締役会はついにオーガニック事業の中止を決定した。新規事業に従事する若い社員の情熱にあおられ、筧はコトブキを辞し、ナチュラルハウス創業を決意したのである。
創業時の取引先への挨拶状では、
- 日本ではまだオーガニック市場がなく、前途多難であり、マーケット自体を創造していかなければならないこと。
- 国内には製造販売面で先輩企業がなく、大変な苦労を伴うこと。
- しかしやるからには業界でNO1の企業にすること。
としたためられている。 この「道を創る」覚悟がナチュラルハウスの創業の精神である。
「この会社に入ってよかった。息子や孫も入れたい。そんな会社を創りたい。」と祈り続けた創業者白川筧。私との最後の会話は、多額の借金を返済し終えた帰りのタクシーの中の、「お前がいてくれて助かったよ。洋平ありがとうな。」だった。
2002年7月20日創業者帰天。一同経営理念唱和で納棺を見送った。
以上が当社の創業の精神です。
「青山店の歴史」
日本では有吉佐和子氏の「複合汚染」、米国ではレイチェルカーソンの「沈黙の春」が、食の安全に警鐘をならした時代でした。
1978年1号店 自由が丘店、1980年神戸元町、1981年3号店下北沢開店
1981年7月 青山店をオープンしたことにより当社の歴史は始まりました。
1980年代 「安全」をテーマに、無添加を追求。
1990年代 「安心」をテーマに、顔の見える生産者を開拓。
2000年代 「健康」をテーマに、ヘルシー·ビューティーの栄養補助食品·化粧品を開発。
2010年代 「環境」をテーマに、「国産オーガニック専門店」を宣言しました。
IFOAM(国際有機農業運動連盟)は、オーガニック業界の歴史を
オーガニック1.0…19世紀末から20世紀初めにかけてスタートした、有機の先駆者たちの取組み
オーガニック2.0…有機認証制度の世界的な普及へと進む1970年代以降のムーブメント
オーガニック3.0…有機認証の有無にかかわらず、有機生産者から消費者、グローバルからリージョナル、様々な課題を幅広く捉えながら、真に持続可能な世界を目指す取り組み。
と提唱しています。日本では2016年が「オーガニック元年」と言われていますが、振り返れば、まさに青山店は、オーガニックの歴史とともに歩んできたと自負しています。
「SLOW LIFE コンセプト」(オーガニック3.0)
現在、「遺伝子組み換え表示」「無添加表示」など、消費者主権(消費者が選ぶ権利)が課題となっていますが、
ナチュラルハウスは2020年より、「SLOWLIFE」を新しいコンセプトとして、オーガニック認証を超えた「オーガニック3.0」の実現に取り組んでいます。特に、プライベートブランド商品は、「だれが」「どこで」「どうやってつくったのか」が分かるパブリックブランドを目指します。
【Sustainable】
遺伝子組み換え原料に対してお客様が選択できることを大切に考えます。商品選定にあたっては、由来原料の遺伝子組み換え分別·不分別を可能な限り確認し、不分別が確認された商品は当社では取り扱わないことを目指します。
【Local】
「だれが」「どこで」「どうやって」作ったのかがわかる商品を優先して取り扱います。また大量生産ではない、文化伝統を大切にする製法にもこだわります。
【Organic】
オーガニック認証の有無にかかわらず、オーガニック基準で認められていない加工無添加を使った商品は基本的に取り扱いません。素材や原料も可能な限りオーガニックなものにこだわります。
【Wellness】
ベジタリアン·グルテンフリー·アレルギーなどのライフスタイルに合う商品を積極的に導入し、全ての人のライフスタイルを豊かさに貢献します。また生活習慣病·ビューティー·ファスティングダイエットなどの専門的なニーズにこたえるメソッド提案を積極的に行います。
【Learn】
食の工業化の人体や環境への影響、持続可能性への取り組みなどの情報を学び、積極的に情報発信します。
【Inspire】
商品だけではなく、生産者の想いや哲学を学び、誠実にお客様と共有します。
【Fun】
お客様がワクワクする売場づくりと接客サービスに取り組み、会員向けのサービスの充実も図ります。
【Experience】
食品もコスメも、なによりまず商品を体験、実感していただくことを大切に考え、店頭での試食やワークショップに力を入れます。また、お客様が生産者とつながることは人生に大きな価値を生むことを信じ、生産者ツアーなどにも積極的に取り組みます。
「43年間ありがとうございました。」
地域の再開発や耐震補強工事という時代の流れとはいえ、その創業の店舗「青山店」を今回閉店することには、言葉には表せない想いがあります。青山店を43年間支えていただき心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
そしてこれから「SLOW LIFE」に取り組むナチュラルハウスを、どうぞ宜しくお願いいたします。
以上
「世界はたった一人から変えられる」
自然と共存するため、不自然な行動を慎む
すべての生命力を、余すことなく活用する
その意思を次の世代へと継続する
それが、ナチュラルハウスの考える
オーガニックというライフスタイルです。
ひとりひとりのできることは小さいけれど、
あきらめない勇気、変えようとする信念
その祈りが大きな希望となるとき、
私たちは未来への恩返しができるのだから。